今回は、前回の山寺の巌壁(いわかべ)の件でも出てきて、今まで何回も話題に上った凝灰岩についての話をしたいと思います。
先ずは、我われ専門家?も一目置く小学館図鑑NEO「岩石・鉱物・化石」の図鑑を開いてみると、凝灰岩については以下のような説明があります。
「堆積岩の分類に入り、火山の噴出物が地層の様に積み重なったもので、火山灰が固まって出来た岩石である。
マグマが急に冷えて出来た為に隙間が多く、軽くて加工しやすい岩石である。
有名なものに大谷石があり、今から1,300万年ぐらい前の日本海が出来た時期、海底火山が噴出した時の大きな火砕流が海底で堆積したものである。」
とありまして、小学生でもよくわかる説明となっています。
とにかくこの図鑑、豊富な写真とイラスト、そして世界中のサンプリングから集めた実例をもとに、石材、岩石の事についての知識として集大成の本だと思っています。
こんな図鑑を若い頃から見て学んでいたら、脳みその空きの限界が来ている大人と比べ、まだまだいくらでも入っていくスペースを持った小中学生が知識を吸収し、石材専門家?も負けてしまうのではと心配するほどの完璧な図鑑です。
何度かこのコラムでも述べてきた通り、当社の創業はこの凝灰岩を主たる素材として始められました。
理由は単純、創業地を含め松島湾内の島々や沿岸地域は凝灰岩層の地層の上に少しばかりの土が堆積し、その上に草が生じそして松が林立して、そして出来上がった景観が日本三景の松島となったものであり、そこに住む人々は自然が与えた素材(松島石=凝灰岩)を活用して家屋の土台となしたり、米を保管する石蔵の材料としたり、自分の敷地と豊かさを表わすための石塀や門柱にしたりと活用してきた地域限定素材を、昭和になって全国流通の機運と共に内外装材活用などのアイデアを加えて、時代の波に乗った創業期の戦略素材でした。
ただ、凝灰岩の性質上、メリットは加工のし易さの他、火には強く湿気にも強いのですが、風化や浸食に弱く耐久年数が短いという欠点から、今の主流ではなくなってきてしまいました。
当社の石材扱いのうち、凝灰岩は1%にも満たない、本当に稀な商材となってしまっています。
石材に善悪はありませんが、凝灰岩はどこの産地の物でも今やほとんど忘れ去られた存在となっています。
しかし、凝灰岩で作った石造物は今でもあらゆる所に存在し、そして今までのコラムに取り上げた様に、我われも常にその実物を目にしています。
更には松島湾の景観そのものが凝灰岩と松で織りなした地球の歴史の産物で、そこには流行も石の強弱も無く、ただそこに存在してくれている姿があります。
湾内には風化と浸食が進んで、その上の植物や松が無くなっても、海を渡る鳥たちには羽を休める場所として、そして外敵から逃れる拠り所としての存在意義が残る、岩だけの小島もあり、心温まる景色を見せてくれています。
時代が求める存在感と、悠久の時間を超えた存在意義は、或いは相容れないものなのかもしれないですが、そこに一千万年前の火山が堆積して岩石となった凝灰岩の役割と限界を考えずにはいられない思いです。


